呼んでる
誰かが
私を呼んでる
レディニルツ
エメラルド山か
大晦日に
行ったきり
僕らは締詣
俺も行く
長男だし
サンダルも落としたんだろう
行こう
待ってて
誰か
・・・・
行くぞ!
あれか
イルネ
ああ
熊だな
ん?なんか赤いのがいるぞ
注意深く進むアロヤとイルネ
ハミルが気付いて顔を少し上げる
"やられる"
人が注意深く進む
獣は警戒心よりも半ば放棄した様な面持ちだった
最期の時か、足音がカウントダウンのように聞こえた
「おい、熊」
アロヤが話しかけるが応じない
「ナオトの使いで来た」
その名前を聞いてハッと瞼を見開く熊
脳が思考するよりも早く
「ナオトは無事か!」
「ああ、そうだ。足をやられたがコイツが処置したから大丈夫だ」
「そうか、よかった」
「お前を助けに来た」
「・・・・」
「そのライオンはなんだ」
「トシミだ。俺が彼を傷つけてしまった」
「わかった。話は後で聞く。開けてやる。安全か?」
「俺たちは何もしない」
アロヤが針金やバタフライナイフを取り出し作業を始めた
錠を細やかにイジる
「おい、アロヤ。何やってる。簡単には開かないぞ」
「任せとけ」
ハミルがトシミに近づいて立て髪を撫でていた
イルネは応急箱を取り出し軟膏と包帯を用意した
5分程経過した
「開いたぞ」
「待て!」
「何してる!」
銃を構えるラララ
あまりにも早くアロヤがナイフを投げつけた
躱すラララ
投刀の勢いを利用して走り出しラララの腹に飛びつき押し倒す
銃を奪い形勢が裏返る
「わかった、降参だ」
「大人しくしろ、殺すぞ」
「何もしない。お前たちの好きにしろ」
「あの熊を連れてく」
「わかった」
「ライオンもだ」
「それは・・わかった。トシミが応じればな」
「ん?」
「俺たちもトシミもここからは逃がれられない」
「何?」
イルネがトシミの処置を終えた
「すまない、医者」
「ああ、行くぞ」
「俺は行かない」
「なに?」
「俺はサバンナで縄張り争いに負けたライオンだった。瀕死の俺を救ったのがHPHPだ。今はこんな風になったが昔は良い組織だったんだ。監督が二代目の息子に変わってから・・」
「わかった、喋るな」
アロヤとラララが睨み合う
「俺たちは親のいないガキだった。いや、生まれてすぐ捨てられた連中だ。此処はそういう人間を引き取って育てていた。いわば俺たちの家なんだ。あのライオンも此処に救われた。あの馬花息子が宝探しなんて言い出さなきゃ」
「宝?」
「あゝ、この山には財宝がある」
「本当か」
「知らねえ。あの馬花息子がそう思い込んでる。夢で見たってよ」
「夢?馬花なのか?」
「その通りだ。ただ、アイツには不思議な力があることも事実だ。俺たちも図りかねてる」
「・・・熊を出せ」
「えっ」
ラララを自由にさせないために、背中に銃を突き立て歩かせる
扉を開かせて、ハミルを救出した
「銃はもらってくぞ。イルネ、行くぞ!熊、こい!」
アロヤの後ろに人と熊。アロヤが銃を構えながら後退りする。充分な距離を確保してから、3つの生命体が走り出した
・・・・
おかえり